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鮮やか手品で交通安全訴え、名物警察官が定年(読売新聞)

 鮮やかな手品で交通安全を訴えてきた福岡県警の名物警察官が3月、定年退職する。北九州市小倉南区の小倉南署朽網(くさみ)交番所長の石川和生警部補(59)。

 小学校や老人ホームなどで開いた安全講習会は35年間で800回を超える。「退職後も事故が少しでも減るよう、マジックで協力していきたい」と話す。

 3日、小倉南区の東朽網市民センター。朽網交番と地域住民との交流会で、石川さんは手品を披露した。

 「ここに乗用車が1台あります」。こう切り出した石川さんは、カードの表に描かれた一つの黒い丸を指した。続いてカードの裏を見せると、黒丸は四つ。次の瞬間、表に戻すと黒丸は3個、さらに裏返すと6個に増えていた。

 「トラックが突然飛び出したね」「バイクも塀の裏から出てきたね」。石川さんは新たに増えた黒丸をトラックやバイクにたとえ、「手品のように、車も瞬間的に出てきたり消えたりするんです」。

 制服姿での披露はこの日が最後だった。約15分間で7種類の手品を見せて交通安全を訴え、大きな拍手をあびた。

 1974年、豊前署管内の駐在所に赴任した石川さんは、小学生が巻き込まれる事故の多発に心を痛めた。「子供たちの印象に残る交通安全の指導法は……」。頭を悩ませていた時、北九州市内の百貨店で手品道具を実演販売する奇術師に出会った。客の食い入るような視線に、「これだ!」。

 特訓を重ね、3か月後、福岡県豊前市の宇島小体育館で初舞台に立った。ひもやハンカチを使って手品を見せ、交通安全を説いた。子供たちは集中力を欠かさず、終わりまで話を聞いてくれた。

 それから3年間、毎日午前1時~2時まで鏡の前で練習に没頭。北九州市内の同好会にも参加し、プロ並みにまで腕を磨いた。「研究熱心でした。交通安全を訴えようとの一念で頑張られた」と同好会メンバーの田村朋彦さん(73)。

 石川さんは「お年寄りや小学生が手品を見て笑顔になると、充実感を覚えた。少しは地域の人と警察の懸け橋になれたのでは」と警察官人生を振り返った。(小野悠紀)

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